自分自身まだ受験生という立場もあるため、あまり偉そうなことは言えないが、普段生きているとたまにこのような質問をされることもあるため、振り返りを込めて少し綴ろうと思う。
*法曹三者
私の事を綴る前に一応、法曹というものについて簡単に説明しよう。
法曹(裁判官、検察官、弁護士(これを一般に法曹三者という))と聞いても一般ではあまり馴染みがないかもしれない。
ごく一部の例外を除けば大抵は司法試験というものをクリアし、その後の司法修習を一年受け、更に修習の卒業試験(二回試験)をクリアして初めて法曹資格を与えられる。
法曹での活躍場は多岐にわたり、主に訴訟事件を取扱う裁判官(判事)。
刑事手続き全般を指揮し、新法の立案から精査、各地事務局への監督などを行う検察官(検事)
民事、刑事、行政とあらゆる法律問題に対して関わり、法律上の争訟を解決することを是とする弁護士など。
各々役割がはっきりと分かれ、基本的には専属的な事務を生業とする。
だから例えば裁判官や弁護士が刑事事件の起訴をしたりはしない(できない)し、検察官が離婚調停に赴くこともない。
このような感じでまとめると、法律関係の終局的な解決をしていく。それが法曹三者である。
*目指したわけ
何故私がこのようなややこしい世界に興味を持つことになったのかというと…
結論から言うと、実は私は最初から法曹を目指して法律の勉強をしたわけではない。
30歳になる頃、これまでに色々な経験をさせてもらったと思っているが、自分には客観的に積み上げてきたものが何一つなく、自己肯定感に悩まされた。
これは世間一般にいえることかもしれないが、人はそう簡単に他人を信じることはできない。
自分の人柄や経験値などが数値化されているわけではないため、たとえいくら自分に自信があったとしても、周囲との温度差はどうしても生じてしまう。
それは関係値、いわゆる距離感が適切であったり、時間が解決してくれたりと違った方向で解決していくものでもあるのだが、歳を重ね、人間関係の変動が激しかった当時としてはまさに死活問題であった。
そんな折に、なにか資格を取ってみようと少し安直な考えから行政書士の通信講座を受講した。
今まで勉強という勉強を満足にしてこなかったのもあり、下地ができていない分、法律という学問は一から勉強するのには適していると思ったからだ。
当然、初期の頃は非常に大変で、勉強をするという習慣を付けることがやっとであり、勉強のやり方から学んでいくことになる。
しかし、法律の勉強は嫌いではなかったし、徐々にではあるがその学問にのめり込んでいき、学習を始めてから一年弱で法曹へ憧れ(後述)、司法試験の勉強も兼学していった。
試験勉強を始めてから行政書士試験に合格するまで二年掛かったが、それでも当時は十分に自信が付いた。
こんな自分でもやり遂げることができた、と。
今まで好きな事を飽きるまでやるというスタンスだった自分にとっては、一大快挙だ。
*様々な出会いから深淵へ
行政書士試験のために法律を学んでいく際に、色々な出会いに恵まれることになる。
八士業(弁護士、司法書士、行政書士など八つの士業)の現役受験生や、弁護士や司法書士といった士業の先生など。
その人達は個々に自分なりの正義を持って仕事に、勉学に臨んでいる。そんな姿勢に共感もしたし、強く胸を打たれた。
なによりも自分自身に対する誇りのようなものを感じた。
今思えば、この出会い達の影響がきっかけとなって、法曹という夢を描き始めたのかもしれない。
目的地への着地点は人それぞれだけれど、「自分にとって大切な人達の力になれる存在で居たい」という考えがアイデンティティとなっていった。
いわば、このアイデンティティそのものが自身にとって今の自分の存在意義であり、価値そのものといっても過言ではない。
存在証明をするために存在している。まるでトートロジーに聞こえるかもしれないが、「法曹を目指したわけ」というテーマを上手に言語化するにはもっと時間が必要なのかもしれない。